医療施設は、「医療法」第20条にて清潔を保持することが求められています。それは、患者や医療従事者にとって、快適な療養環境を提供する必要があることを定めたもので、医療施設における清掃の重要性を意味しているのです。今回は、医療施設における清掃の特殊性について解説するとともに、清掃の種類や注意点について詳しく解説します。
1.医療施設における清掃の特殊性について
医療施設における清掃は、一般的なオフィスや商業施設の清掃とは、方法や進め方に大きな違いがあります。その特殊性について、主に以下の4つの観点から解説します。
1-1.清掃の目的の違い
医療施設は、文字通り医療を提供する施設であり、患者や医療従事者が利用します。そのため医療施設における清掃では、美観および快適な環境の維持と建物の保全の他に、衛生環境の保全や安全性の向上、医療関係者の作業能率の向上などを目的に行われます。手術後の患者や免疫が低下している患者などもおり、とくに感染防止のための消毒作業などは、徹底したルールと管理のもと行われなければなりません。
1-2.施設や置かれている機材等の違い
医療施設には、外来棟・入院棟・管理棟などに分けられた大きな病院もあり、診察室・処置室・手術室・病室・ICUなどの特殊な施設もあるでしょう。病室では、入院患者が診察・処置・投薬・食事・入浴などを受けながら療養生活を送っているのです。救急病院であれば、救急患者を24時間体制で受け入れています。
また、処置室や手術室・ICUにはさまざまな医療機器や機材が置かれており、ナースステーションや保管スペースには医薬品等が保管されています。
1-3.根拠となる法律の違い
医療施設においては、「医療法」・「医療法施行令」・「医療法施行規則」や「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」などの法令に基づき、運営が行われています。清掃業務についても、これらの法令に照らし合わせて、適切なルールと管理のもと行われることが求められるのです。なお、病院が清掃を外部に委託する際には、受託業務場所に「病院清掃受託責任者」の資格を有した責任者の配置が医療法施行規則で定められています。
1-4.作業の安全性の違い
医療施設では、排出されるゴミの中に、注射針や手術・処置などで発生するガーゼ・手袋などの廃棄物もあります。清掃従事者が、作業中に感染患者の血液や淡・糞便・尿・体液などの分泌液に触れる可能性も高く、適切な作業方法や廃棄物処理方法を行うなど、安全性の確保が非常に重要となります。
2.医療施設における清掃の種類は3つ
ここまで、医療施設における清掃の特殊性について説明しましたが、具体的な清掃の種類は大別すると以下の3つに分けられます。
2-1.日常清掃
病室やトイレ・待合室など人の出入りの多いところを、掃き掃除・拭き掃除・塵埃処理などを日常的に毎日行うのです。埃取りは、とくに通気口や空調・カーテンレール・手すりなどを、埃が飛散しないよう静電気ダスター等を用いて行います。ゴミ箱なども細菌の温床となるため、こまめに拭き掃除を行います。また、高い頻度で人の手が触れるところ(ドアノブ・手すり・水道コック・ベッド柵など)は、感染防止のためにアルコール消毒も行う必要があるでしょう。
2-2.定期清掃
日常清掃では、なかなか清掃しきれないような場所や汚れなどを、専用の道具や洗浄剤・溶剤などを使って定期的に清掃します。主に以下のようなものがあります。
- 床の洗浄とワックスがけ
- ガラス磨き
- エアコン洗浄
- 換気扇洗浄
2-3.臨時清掃
定期清掃までは行わないものの、汚れが目立ってきた際や、急を要するような清掃が必要となった場合に行う清掃です。主に以下のようなものがあります。
- 外壁や屋根の清掃
- 高所のガラス磨き
- エアコン内部の洗浄
- 排水管、浄化槽、貯水槽の清掃
3.医療施設の清掃の注意点とは?
医療施設の清掃は、その特殊性から多くの注意点が存在します。ここでは、とくに重要となる4つの注意点について以下に解説します。
3-1.外来患者や入院患者への配慮
まず基本的なこととして、患者に配慮しながら、安全で衛生的な清掃を心掛けなければなりません。たとえば、埃を舞い上げないような清掃や、必要以上に音が立たないよう清掃を行い、清掃用具から嫌な臭いを発生させないような管理について日常的に行うことなどが求められます。
3-2.施設区域ごとに求められる清浄度が異なる
医療施設では、日本医療福祉設備協会が刊行している「病院設備設計ガイドライン(空調設備編)HEAS-02-2013」に基づき、要求される清浄度や目的によって、5つの区域に分類した「ゾーニング」という考え方があります。主な内容は以下の表のとおりですが、清掃作業もこのゾーニングの考え方に沿って行われる必要があります。
清浄度クラス | 名称 | 摘要 | 該当室(代表例) |
---|---|---|---|
Ⅰ | 高度清潔区域 | 高度な清浄度が要求される | 易感染患者用病室 バイオクリーン手術室 |
Ⅱ | 清潔区域 | Ⅰの次に高度な清浄度が要求される | 一般手術室 |
Ⅲ | 準清潔区域 | Ⅱよりもやや清掃度は下がるがⅣ 一般区域よりも高度な清浄度が要求される | 未熟児室 分娩室 NICU・ICU・CCU |
Ⅳ | 一般清潔区域 | 原則として開創状態ではない患者が在室する一般的なエリア | 一般病室 診療室 新生児室 |
Ⅴ | 汚染管理区域 | 有害物質を扱ったり、臭気が発生したりする区域 | RI管理区域諸室 細菌検査室 病理検査室 |
拡散防止区域 | 不快な臭気や粉塵等が発生する区域 | トイレ 使用済リネン室 汚物処理室 霊安室 |
※引用:厚生労働科学研究費補助金「標準的な院内清掃のあり方の研究班」作成『院内清掃ガイドライン』
3-3.医療機器など精密機械が多く存在
レントゲン室や検査室・手術室などには、診断機器や検査機器などの医療機器類が多く設置されています。このような区域では、清掃用具を接触させたり、コードや点滴チューブなどに引っ掛けたりしないよう、十分に注意する必要があります。
3-4.清掃従事者の安全の確保
医療施設の清掃作業では、清掃従業者も常に感染リスクと隣り合わせの状況で作業を行いますので、感染防止等の安全確保に留意しなければなりません。また、施設内には医薬品をはじめとする化学製品や毒物・劇物・高圧ガスなどが多く存在しており、清掃従事者に対しても、取扱注意の周知徹底を行う必要があります。
4.まとめ
医療施設における清掃は、その特殊性から、一般的なオフィスや商業施設とは作業方法や進め方に大きな違いがあります。とくに衛生面や安全面においては、根拠となる法律のもと、多くの注意点が存在します。そのため、医療施設が医療提供の傍ら清掃作業も自前で対応するのは非常に難しく、多くの施設が外部に清掃作業を委託しているのです。
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